職人今昔物語 | 株式会社マツドリフォーム

職人今昔物語

30年前・・

そう、バブル経済の真っただ中、私は自動車整備士から建築リフォーム業界へ転身しました。入社した会社は、ド素人の私に対して、いきなり全面改装の現場監督に抜擢したのでした。←おいおい(汗)

業界未経験の私は、当然ながら現場で右往左往するばかりで、自分が一体全体何をやっているのかさえ分からず、現場にいる職人も思うように働いてくれません。作業をしながらたばこは吸うし、仕事をを放ったらかして帰ってしまうし・・そうそう、電気屋さんが帰ってしまい、仕方がないので、自分で電気の配線を処理しようとして悶絶!危うく入社早々、現場で感電死しそうになる始末(トホホ)。

とまぁ、私の住宅リフォーム人生のスタートは、ざっとこんな感じで始まった訳ですが、今日は、そんな私の思い出話をしたい訳ではなく、今と昔で、職人の質にどう違いがあるのか?その辺りをお話したいと思い、キーボードを叩いている次第です。

さて、当時、私が従業員として働いていた会社の職人の多くは、技術的なこだわりというものはほぼ無く、どちらかと言えば、お金を稼ぐことに夢中であり、単価の低い現場には目もくれず、ひたすら稼ぐことへの執着が高かったという記憶があります。

私が一番最初に経験した現場がまさしく、予算も少なく、職人の単価を安くせざる得なかった現場でしたので、かなり手を抜かれた仕上げでした。(無念!)

バブル当時、職人の仕事は3K(キケン・キツイ・キタナイ)と呼ばれ、唯一の魅力と言えば、「お金をたくさん稼げる!」みたいな風潮がありました。

ある現場で実際にあった話です。職人の1日の単価を「人工」といいますが、当時、トイレの床(クッションフロア)を張り替える職人が見つからず、ようやく見つけた職人は、約10分の作業に対し、9万円もの人工を請求してきたというから驚きです。また、天井のクロス3本貼るのに10万円を支払ったというリフォーム会社の社長の愚痴を聞いたこともありました。さすがはバブル!正に言ったもん勝ち。

もちろん、真っ当に仕事をしている方が大半だったと思うのですが、一部では、腕も大して良くないのに、かなり勘違いをされている方たちがいたのも事実です。しかし、そんな甘い日々が続く訳がなく、その後、職人の単価は適正に落ち着いていくのでした。

ここで誤解をしないで頂きたいのですが、何も私は、職人の単価が高くなることを否定している訳ではありません。むしろ、仕事の有無に関わらず、ドイツのクラフトマン制度のように、もっと国が建築職人の保護に力を入れ、そこに税金を投入してでも、腕の良い職人が職を失わないようにするべきだとさえ思っています。

需要の有る無しだけで、志半ばで廃業に追い込まれていく職人をこれ以上生み出すのは、どう考えても国の損失だと思うのです。余談になりますが、残念ながら我が国は、職人文化に対するリスペクトが薄い気がしてなりません。

さてさて、昔は一攫千金宜しく、「そんな単価じゃやってらんねーぜ!おととい来やがれ!」という世界であり、何となく取っ付きにくく、また、ちょっと強面のおじさん達が幅を利かせて、少しでも気に入らないことがあれば「帰るぞ!」と言い、現場監督や施主を困らせたものでした・・。って、私だけですかね!(笑)

では、現在はどうでしょうか?

ハッキリ言ってしまえば、腕の良い職人は、単価が高く、腕のイマイチな職人は、単価は安いです。なんとまぁ、分かりやすいことでしょうか!昔のように誰でも多くのお金が稼げる時代はとっくに終焉を迎えています。言うなれば実力主義の厳しい世界。また、腕だけではなく、施主や近隣に対するマナーや挨拶もしっかりと出来なければ、容赦なく半人前の烙印を押されてしまいます。

30年間、職人という人達を客観的に見てきた、あくまでも私の主観ではありますが、現在の(特に若者)職人は、以前の職人に比べても素直で清潔感もあり、勤勉で、自分が職人であることに誇りに思っている方が増えてきている印象があり、明らかに現在の職人の方が質が高いと思います。

何というか、まるでアーティストのような感覚とでも言いましょうか・・良いものを造りたいという、清らかな心の叫びが聞こえるのです。そんな彼らの思いを叶えてくれる現場は、まさにステージであり、人生そのものなのでしょう。素直にカッコいいと思います。

何か昔の職人を卑下するようになってしまったかな・・という反省もありつつ、少し後味が悪くなってしまいましたが、最後に一言。

貴方方がいるからリフォームが成り立つのであり、貴方方なしにリフォームは語れません・・

だから、職人さん、永遠なれ。

代表取締役 松戸 明

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