本稿では、リフォーム工事の「電子契約」について解説します。これからリフォームされる方は、リフォーム会社との工事契約が紙の書面ではなく、PDFなどの電子ファイルになるかもしれません。ぜひ最後までご覧いただき、予備知識にしてください。
電子契約を導入するリフォーム会社が、少しずつ増えてきました。今後は主流になりそうですが、現時点では、便利なのか面倒ではないのかイマイチわかりませんよね。「なんとなく紙の書面のほうが安心する」という方も少なくないでしょう。
実は、電子契約は従来の書面の契約に比べて時間とお金を節約してくれます。「使わなければ、もったいない」と言っても過言ではありません。コロナ禍以降、もっとも注目されている契約スタイルとして知っておいていただくとよいでしょう。
工事請負契約書は、書面交付が必要なのでは?
以前に新築やリフォーム工事をした方なら、建設業法第19条で、契約は必要事項を「書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」と規定されているのをご存知かもしれません。
当然「あれ?リフォーム工事って、電子契約でOKなの?」「紙の書面で交付しないと、ダメなのでは?」と思いますよね。結論を先に言うと、電子契約でも大丈夫です。
参考:建設業法 第十九条
そもそも「建設業法」という法律にこのような規定があるのは、建築工事の金額が大きいからです。お施主様(工事発注者)を保護するために、契約書の原本性と見読性(読みやすさ)が重視されているのです。
「原本性」は難しい言葉ですが、意訳すると「なりすましがないこと・改ざんされていないこと・コピーではないことが推定できる」と考えてもらうとよいです。
さてここで、電子文書を思い出してみてください。電子文章はコピーや改ざんが簡単で、パソコン等がないと読めません。筆跡鑑定もできません。とは言え、契約の電子化は自然な流れで、政府も電子契約書を推進しています。
そこで、建設業法も第19条3項を追加して、原本性と見読性について一定の条件を満たせば、電子契約でもOKとしました。その条件は、以下のとおりです。
・改ざんされないように、公開鍵暗号方式を採用する
・他人がその者になりすましていないかという確認ができる
・契約事項等の電磁的記録等を適切に保存できる
・簡単かつ整然と、ディスプレイに表示したり紙の書面にしたりできる
参考:建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン
更に、2020年4月に施行された改正民法522条2項でも「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と規定。電子署名法3条でも、電子署名がある契約は「真正に成立したと推定できる」としました。
このように現在は、リフォーム工事でも「契約の成立に書面は必要ない」ことが関連法規で明文化されているのです。
電子契約とは?
それでは、改めまして「電子契約」について詳しく解説していきましょう。そもそも、電子契約とはどういう契約なのでしょうか?書面の契約書と、なにが変わるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
電子契約の概要
電子契約とは、インターネット上で契約ができる仕組みのことです。ペーパーレス化と効率化、費用削減が進むと期待されています。
ただし先述のとおり、インターネット上の文書は改ざんや作成者のなりすましがしやすい等の欠点があります。ですから、これらをクリアした電子契約が、書面に代わる契約として認められています。
現在、大手は自社開発の電子契約システムを。中小企業は電子契約サービスを利用している会社が多数のように感じます。いくつか、主な電子契約サービスをご紹介しましょう。だいたい、このあたりを使っている会社が多いのではないでしょうか。
・クラウドサイン(弁護士ドットコム株式会社)
・GMO電子印鑑Agree(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)
・ドキュサイン(ドキュサイン・ジャパン株式会社)
・Adobe Sign(アドビ株式会社)
・リーテックスデジタル契約(リーテックス株式会社)
・NINJA SIGN(株式会社サイトビジット)
電子契約は2001年頃から普及しはじめ、当初は送信者と受信者がともに鍵暗号を格納したカードを準備して利用していました。これは手間がかかるので、普及が進まなかったようです。
その後2015年ごろから上であげたようなクラウド署名型の電子契約サービスが登場して、感染症対策にもなることから普及が加速しました。このタイプの電子契約は、受信者は登録も手数料も不要で、メールアドレスがあれば使えます。
電子契約の普及率は、2020年におこなわれた調査によると以下のような状況です。およそ4社に1社がすでに利用していて、未利用の会社の半数は導入を検討しています。
・利用済み:27.1%
・未利用だが、今後に向けて検討中である:35.0%
・利用する予定がない:37.9%
参考:「企業IT利活用動向調査2020」集計結果 -電子契約の利用状況について-
書面の契約書との違い
つづいて、書面による契約と電子契約の違いをみていきましょう。2つの契約には、以下のような差があります。
体裁 | 書面契約 | 紙で印刷して製本 |
電子契約 | PDF等の電子データ | |
署名方法 | 書面契約 | 署名と押印 |
電子契約 | 電子署名 | |
締結日時 | 書面契約 | 日付を記入 |
電子契約 | タイムスタンプ(契約内容に合意した日時を示す時刻証明) | |
保管方法 | 書面契約 | 書面による契約書をファイル棚などに保管 |
電子契約 | サーバーや外部データセンターに保管 |
電子契約は、上述の特徴から紙の契約書にはないメリットがあります。メリットについては、のちほどデメリットと一緒にご紹介します。
次は、あまり聞きなじみのない「電子署名」についてご説明しましょう。
電子署名とは?
紙の契約書の場合は、署名と押印をします。これでインクや朱肉、筆跡を用いて原本性の鑑定ができます。電子契約において、これに代わるのが「電子署名」です。
と言っても、タブレット端末を使って電子ペンで名前を書くことはしません。大抵の電子契約では、インターネット接続されたパソコン等で、画面上の「契約内容に同意」ボタンを押すだけで電子署名が完了します。
電子署名があるファイルは「いつ、だれが」文書の内容に合意したか、その後改変が行われていないか記録されます。このように仕組みがわからない人でも簡単に利用可能で、原本性が確保できる技術的措置が「電子署名」です。
リフォーム工事の電子契約の流れ
電子契約の流れも、ご紹介しておきましょう。電子契約は、以下のように進んでいきます。
①リフォーム会社が電子契約サービスに登録(お施主様も登録が必要な場合もある)
②リフォーム会社がインターネット上に契約書をアップロード
③リフォーム会社がお施主様にメールで通知
④お施主様が契約書の内容を確認
⑤契約内容の合意締結
⑥電子署名が施されたPDFファイルが送られてくる
先述のとおり契約の合意に関しては、多くの電子契約サービスでは「書類の内容に同意」ボタンを押すだけです。署名も押印も要らないので、書面の契約にくらべてとてもラクに合意できます。
電子契約は、書面契約とくらべて、他にも以下の作業が要らなくなります。
・契約書の受け取り
・印紙の購入と添付
・物理的な保管
このように利点が多い電子契約ですが、弱点がないわけではありません。つづいて、電子契約のメリットとデメリットを詳しくご紹介していきましょう。
電子契約のメリットとデメリット
現在、リフォーム業界も電子契約の普及が進み、メリットだけでなくデメリットも見えてきました。まずは、デメリットからご紹介していきましょう。
電子契約のデメリット
電子契約には、以下のデメリットがあります。
・パソコン・タブレット・スマホ等で多少の操作が必要
・電子契約に対応していないリフォーム会社がある
・不明点があるとき、その場ですぐに質問できない
そもそも、電子契約をしようと思うと、パソコン・タブレット・スマホ等が必要です。リフォーム会社が電子契約に対応していなければ、利用したくても出来ません。
また、対面の書面契約であればその場ですぐに聞けるような疑問も、メールや電話等で確認する必要があります。これも、お手間と言えばお手間でしょう。
電子契約のメリット
まずはデメリットをご紹介しましたが、電子契約にはそれを補って余りあるメリットがあります。ご紹介しましょう。
・自宅でゆっくり契約内容の確認をしながら合意できる
・ご来社いただかなくともパソコンやスマホでご契約手続きが可能
・セキュリティ水準が高い保管がラクにでき、契約書の紛失や損傷もしにくい
・印紙税の納付が不要
ソーシャルディスタンスが推奨される昨今、リフォーム業界でも「リモートでできることは、リモートでやろう」という流れになっています。その点、電子契約はその流れに沿う仕組みです。
また、電子契約で作成される電子ファイルは、紙の契約書よりラクに管理出来ます。セキュリティ水準が高いオンラインストレージに保管すれば、紛失や火災による損傷も避けられます。
さらに電子契約では、紙の契約書では必要な印紙税の納付が不要になります。これは、内閣府の「電子契約の推進について」にも明記されています。
実は、現在のところ電子契約は印紙税法で課税文書(課税の対象となる契約書)と見なされていません。今後見直されるかもしれませんが、今は時間とお金を節約出来る契約スタイルになっています。
リフォーム工事の電子契約まとめ
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、電子契約を導入したリフォーム会社が増えています。この流れは業界を問わず今後ますます加速していきそうですので、電子契約がどういうものか、知っておいて損はありません。
電子契約には書面契約にはないメリットがいくつもあり、そのおかげで契約にかかる時間や手間、費用を削減出来ます。もしも、あなたがリフォーム工事を依頼する会社が電子契約に対応しているなら、積極的に活用していただくとよいでしょう。
弊社でも、電子契約を採用しています。オンライン通話によるお打ち合わせも可能ですので、リフォーム行為で感染症対策をしたい方はぜひご活用ください。その他の、弊社の感染拡大防止対策は、こちらをご覧ください。