耐震基準に適合しない中古住宅を取得し、住宅ローン減税を受けるには?

私はこれまで、今後の不動産流通に必要な知識を得るため、多くのセミナーや講習会に参加してきました。 どれもこれも学びが多く、受講を重ねる度に新しい知識がインプットされる喜びを実感しています。特に国土交通省主催のセミナーでは、スクラップ&ビルドから、ストック&フローへの転換を示唆する内容が多く、大変興味深く勉強させて頂いております。

今回のコラムは、今まで中古住宅を購入する際に問題の多かった、「耐震基準適合証明書」の発行時期見直しを取り上げ、国がいかに日本の中古住宅市場を欧米並みに拡大させ、新築中心の市場から中古流通で循環利用されるストック型市場への転換を図ろうとしているかをお伝えしたいと思います。

具体例を挙げて説明しますと、「Aさん」が「Bさん」所有の築20年以上の一戸建て住宅を購入したとします。築20年未満の住宅であれば「Aさん」はローン控除の恩恵が受けられます。しかし、築20年以上の住宅の場合は、建築士による耐震基準適合証明書の発行を「売主Bさん」が、売買契約締結前までに完了させなければなりませんでした。また、この住宅が耐震基準を満たしていない場合、「売主Bさん」が耐震補強工事を行い、基準値を満たした上で証明書の発行を依頼しなければなりませんでした。

しかし、売買契約締結前に耐震補強工事を行う際問題だったのは、「Bさん」が住宅を売らないと引っ越しが出来ないケースです。 このケースでは、「Bさん」は、在宅のまま耐震補強工事を行うことになりますが、「Bさん」の立場であれば、そのような面倒なことは避け、現状のままで、なるべく高く購入してくれる方に売りたいと考えるのが一般的だと思います。

一方、買主「Aさん」としては、耐震基準を満たした安全な住宅で、しかも、住宅ローンの控除も受けたいと思っていますので、この住宅の購入を諦めたでしょう。しかし、以前までなら耐震基準に適合しない中古住宅を取得し、耐震改修工事を行った後に入居する場合は受けられなかった、住宅ローン減税、贈与税、不動産取得税の特別措置が受けられることになりました。つまり今後は、「Aさん」は、「Bさん」から住宅を購入後、「Aさん」が耐震改修工事の申請をし、入居する日までに工事が完了していれば、特別措置の適用を受けることが出来る訳です。

 

このように、矛盾した制度を少し見直し、税制面の軽減措置を加えるだけで、以前なら流通しなかった住宅も売り易くなります。また、買う側にとっても、築年数をそれほど気にすることがなくなりますので、多くの選択肢の中から気に入った住宅を選択出来るでしょう。住宅の耐震化もより一層進みますので、地域の安全対策としても効果的であると言えるのではないでしょうか。

くどいようですが、米国での住宅の価値は、リフォームで維持することにより価値が上がります。それに伴い住宅資産も上昇していく資産形成になっており、資産価値は、年平均5~8%も上昇しています。これにより住み替えも容易である為、住宅の流通も大いに活性化します。

しかし、日本では築年数と共に住宅の価値が下がる負債形成になっています。何故ならば、米国では手入れをして物件を良好に保ち、たとえ所有者は子や孫でなくても何世代も住み継がれるのに対し、日本では一世代程度で家を建て替えてしまうため、新築の価格が基準となり、中古住宅の価値が上がり難い構造になっているからです。 その結果、住宅は一生に一度の買い物となり、ライフスタイルに応じた住み替えが難しくなってしまうのです。

現在、国土交通省では、この米国の住宅流通の仕組みを模範としながら、日本の住宅流通システムを改革する為の政策を次々と打ち出しています。日本も早く欧米並みになってほしいと願いつつ、 私も全力で頑張っていきたいと思っています。

松戸 明

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