住宅履歴情報(いえかるて)とは?住宅経歴の蓄積・管理システム活用法 | 株式会社マツドリフォーム

住宅履歴情報(いえかるて)とは?住宅経歴の蓄積・管理システム活用法

本稿では、住宅履歴情報の概要をご説明します。だれが履歴情報を保管するのか、履歴情報を蓄積・保管するメリットがあるのか、デメリットはないのか等、詳しくご紹介したいと思います。

現在、国は「住宅は社会的な資産」と考え、長期間活用できるように数々の取り組みを実施しています。住宅履歴もそのひとつで、いわば家の「経歴書」や「カルテ」に相当します。これを作り管理すると、所有者の交代やリフォームが容易になるのです。

今のところ、住宅履歴情報の蓄積・保管は長期優良住宅だけが義務化されています。ですが、長期優良住宅以外が使えないわけではありません。既存住宅の所有者が、リフォームする機会に「履歴を残していきたい」と思われることもあるでしょう。

本稿では、長期優良住宅以外の既存住宅が「住宅履歴」を保存・蓄積する方法についても解説します。ご興味ある方は、ぜひ最後までご覧ください。

住宅履歴情報管理システム「いえかるて」とは?

それではさっそく、住宅履歴情報(通称、いえかるて)の概要からご説明していきます。

住宅履歴情報とは?

 

住宅履歴とは、簡単に言うと「住まいの経歴や、修繕・リフォームの記録」のことです。ですから住宅履歴情報とは、住宅の「経歴書」あるいは「カルテ」のようなものと考えていただくと分かりやすいでしょう。

住宅履歴情報には「設計・施工・維持管理・権利・資産」等に関する書類や図面、写真などが蓄積されていきます。それを見ると、どのような造りでどのような性能がある住宅か、これまでにどのような点検・修繕・リフォームが実施されたのか、すぐにわかるようになっています。

このような記録が瞬時にわかると、維持管理や売買の際におおいに役立ちます。

ですが現状では、履歴情報の蓄積・管理はほぼ長期優良住宅しかおこなわれていません。今後は、非長期優良住宅にもひろげていくことが課題になっています。

「いえかるて」とは?

住宅履歴情報には「いえかるて」という愛称があります。これは、2009年に国土交通省が指導する住宅履歴情報整備検討委員会で決まりました。

「いえかるて」では、登録する建物1戸1戸に世界で唯一のID番号が発行されます。このIDは世界共通で、32桁16進法で表示されます。住宅の所有者が変わっても、ID番号が変わることはありません。

さて「いえかるて」ではどのような情報が管理されるのでしょうか。蓄積される図書の例をご紹介しましょう。

項目

蓄積される図書の例

契約書

・不動産売買契約書
・建築工事請負契約書

設計図書

・平面図
・立面図
・断面図
・基礎伏図
・仕様書
・構造計算書

申請図書

・建築確認
・完了検査済証

工事関連図書・保証書

・施工写真
・工事監理報告書
・地盤調査報告書・保証書
・開発行為に係る書類や図面
・住宅性能評価
・長期優良住宅認定
・耐震基準適合証明書

維持保全計画書

・点検計画
・認定長期優良住宅の維持保全計画

定期点検報告

・定期点検に係る書類や図面等
・住宅診断に係る書類や図面等

リフォーム工事履歴

・修繕計画
・修繕に係る書類や図面等
・改修工事に係る書類や図面等

その他

・マンション管理規約
・不動産売買時の重要事項説明書

現在、長期優良住宅に関しては、一部の図書は法規によって記録の作成と保存が義務づけられています。図書の保存義務がない非長期優良住宅や既存住宅に関しては、住宅履歴にかかわる図書で存在するものを蓄積・保管していけばよいでしょう。

参考:国土交通省「長期優良住宅における記録の作成と保存について」

住宅履歴の保存義務

さて、先述のとおり長期優良住宅は住宅履歴を残すことが義務づけられています。これは「長期優良住宅の普及の促進に関する法律 11条」で定められていて、保存の責任者は「認定計画実施者」となっています。

さて、認定計画実施者とはだれのことでしょうか。住宅所有者でしょうか?それとも建築会社やリフォーム会社でしょうか?

参考:長期優良住宅の普及の促進に関する法律

住宅履歴の利用者は、住宅の所有者または建築会社・リフォーム会社です。このうち、住宅履歴の保管義務は「住宅の所有者」にあります。

「住宅履歴情報の蓄積・活用の指針」には、住宅所有者は「住宅を社会的な資産として認識し、情報を蓄積」して「住宅とその住宅履歴情報をしっかりと次の所有者へ引き継ぐこと」と記されています。

いっぽう、建築会社・リフォーム会社には「履歴の生産者」として「住宅履歴情報の正確な生成を行い、住宅所有者に確実に渡す」ことが求められています。

参考:住宅履歴情報の蓄積・活用の指針

では、住宅履歴情報の保存が義務づけられている長期優良住宅の所有者が、履歴情報を蓄積しないとどうなるのでしょうか?実は、保存義務をおこたるとペナルティやデメリットがあります (詳しくは後述)。

住宅履歴情報が運用されるようになった経緯

さて、そもそもなぜ住宅履歴情報制度が始まったのでしょうか。

日本の住宅の平均寿命は、欧米と比較するとかなり短く、およそ30年と言われます。そのため日本人は新築をよしとする傾向が強く、ひと世代ごとに新しい住宅を買ったり、中古住宅が空き家のまま放置されたりするケースがめずらしくありません。

現在、増え続ける空き家は社会問題になっていて、日本は「いい住宅をつくり、きちんと手入れして、長く大切に使う」住宅ストック活用型市場への転換をせまられています。

これを実現するために2006年に施行されたのが「住生活基本法」と2008年に創設された「住宅履歴書制度」です。

その後、上述の法のもと「200年住宅ビジョン」がかかげられ、2009年6月に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されたあと、ロングライフ住宅を「長期優良住宅」と呼ぶようになりました。

このとき「住宅履歴書」を残していくことが義務化された、というのがこれまでの流れです。

表にまとめてみましょう。

 

できごと

備考

2006年6月 住生活基本法施行

作っては壊す住政策から、住宅の長寿化と中古市場の活性化促進政策に転換して「200年住宅ビジョン」をかかげる

2008年 住宅履歴書制度創設

設計図や定期点検の履歴、震災発生時の被災状況などをデータベースで一括管理する「履歴書」を持つ住宅は減税された

2009年6月 長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行

「200年住宅ビジョン」のもと長期優良住宅が誕生し、該当住宅は住宅履歴を残すことが義務化される

現在の日本の政策では、住宅は個人資産であると同時に「世代を超えて継承されるべき社会的資産」と見なされています。ですから、ちゃんと維持管理された住宅とその履歴情報が、次の所有者へ引き継がれるようにすることが大切です。

これは、けっして長期優良住宅だけに限った話ではありません。非長期優良住宅や既存の中古住宅もしっかりメンテナンスして、可能な限り長く、世代を超えて活用していくべきです。ですから、長期優良住宅以外の住宅が住宅履歴情報を残すことも意義があるのです。

住宅履歴情報のメリットとデメリット

つづいて、住宅履歴情報のメリットとデメリットをご紹介しましょう。まずは、メリットをご説明したあと、デメリットもご紹介します。

住宅履歴情報のメリット

住宅履歴情報は、おもに住宅所有者にとって以下のメリットがあります。

・計画的に維持管理できる
・合理的で的確なリフォーム計画ができる
・不具合の原因特定に役立つ
・売買するときに有利になる

住宅履歴情報に新築時の仕様や維持管理情報がのっていると、今後のメンテナンスやリフォーム計画が立てやすくなります。

たとえば「前回は10年前に給湯器を替えているから、もうそろそろ次の交換時期だ」とか「交換はフルオートのエコジョーズにすればOK」といった判断がカンタンにできます。メーカーリコールの対応や災害時の復旧も、迅速に進められるでしょう。

売買する際も、住宅履歴情報が役立ちます。建物の状態や価値を適正に評価できるので、買主が安心・納得して購入できます。

これらのメリットは、長期優良住宅に限ったものではありません。非長期優良住宅や既存住宅であっても、思い立ったときから履歴情報を蓄積していく意義は大きいでしょう。実際、国も対象住宅を広げようと検討していますので、ご興味を持たれたときが始めどきかもしれませんね。

住宅履歴情報のデメリット

住宅履歴は良いことばかりではなく、デメリットもあります。まず、資料のデジタル化や整理・保管の手間がかかります。これは「住宅履歴情報サービス」を使えば少しラクになるので、ご検討いただいてもいいでしょう。

ただし、住宅履歴情報サービスを利用して保管する場合は、保管費用がかかります。基本料金はサービス事業者ごとに違いますが、相場は以下のとおりです。

・新築 ⇒ 3~4万円/30年
・リフォーム・増改築 ⇒ 2~3万円/30年

基本料金で使える保管容量を超えると、追加費用が発生します。図書のデータ化や保管作業は自分でおこないますが、有償でサービス事業者に委託することも可能です。

保管は10年ごとに更新があり、更新料は累計30年まで無料に設定している事業者が多いようです。30年利用すると、新築は1か月当たり「約80~110円」。リフォーム・増改築は1か月当たり「約55~80円」になる計算ですね。

参考:日本住宅保証検査機構「住宅履歴情報サービス料金表」

なお長期優良住宅に関しては、履歴を蓄積しないと以下のペナルティを受ける可能性があります。これも、デメリットと言えるでしょう。

・建築・維持保全についての報告ができない
・30万円以下の罰金
・長期優良住宅の認定取り消し

長期優良住宅の所有者は、所管行政庁から「建築・維持保全」についての報告を求められることがあります。まんがいち住宅履歴情報を蓄積・保管していないと、この報告ができません。                                          

「建築・維持保全」についての報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりすると、30万円以下の罰金が課されます。所管行政庁からの改善指示に従わない場合は、長期優良住宅の認定そのものが取り消しになることもあり得ます。

もし長期優良住宅の認定を剥奪されたら、以後は減税などの優遇が受けられなくなります。それどころか、これまで受けた優遇の返還を求められることも考えられますので、長期優良住宅は住宅履歴の蓄積・保管をおこたらないようにしましょう。

住宅履歴情報の保存・蓄積方法

最後に、住宅履歴情報の保存・蓄積方法について解説します。いったい、どうやって住宅履歴情報を保存・蓄積すればいいのでしょうか。

長期優良住宅(新築)は、建築会社から所有者に案内があると思いますので、それに合わせて進めていけばOKです。非長期優良住宅を新築された方も、建築会社に相談すれば保存・蓄積方法を教えてもらえます。

既存住宅や中古住宅は、思い立った日から保存・蓄積を開始するのがよいでしょう。とくに点検やリフォームをおこなったときが絶好のチャンスで、ぜひその際に利用した図面や資料、報告書等から蓄積を開始してください。

住宅履歴情報のおもな保存・蓄積方法は2つです。

①住宅所有者が自分で保管する
②住宅履歴情報保管サービスを利用する

住宅所有者が自分で保管する場合は、いつでもすぐに始められます。資料が必要になったらカンタンに閲覧できるように、大切に保管してください。

自分で保管する自身がない方は、住宅履歴情報保管サービスを利用するといいでしょう。有料ですが、まんがいち住宅所有者が履歴情報を紛失しても、サービス事業者が管理するサーバーにデータが残っているので安心です。

住宅履歴情報保管サービスの特徴を、箇条書きでご紹介しましょう。

・住宅履歴情報整備検討委員会が推奨するルールに則り、住宅履歴情報の管理を行う
・いつでも利用できて、やめることもできる
・情報サービス機関が廃業しても、他の機関で蓄積情報を継承できる
・提供しているサービス・サポート・価格等は情報サービス機関によって様々
・図書等を電子データ化して、ウェブ上でやり取りできる

中には、管理する情報に基づき点検等の時期を知らせてくれる事業者もあります。一般の方にとって住宅のメンテナンス時期はわかりにくいので、良いサービスではないでしょうか。

住宅履歴情報サービスは、既存住宅や中古住宅も月々100円未満で利用できます。詳しく知りたい方は建築会社やリフォーム会社にご相談ください。弊社でも蓄積・管理の代行をおこなっていますので、ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。

マツドリフォームの住宅履歴

住宅履歴情報(いえかるて)蓄積・管理システムまとめ

 

住宅履歴とは、簡単に言うと「住まいの経歴や、修繕・リフォームの記録」のことです。この履歴を蓄積することで、メンテナンスやリフォームの計画や実施が容易にできるようになります。

的確な維持管理がおこなわれている住宅は、寿命が延びるだけでなく資産価値が上がります。売却する際は買主が安心して買えるので、適正価格で円滑に売買できるでしょう。

もともと長期優良住宅用の制度として始まった「住宅履歴情報」ですが、非長期優良住宅や既存住宅も活用できます。自分でデータ管理するのが面倒な方には、月々100円前後で管理がラクになる蓄積・管理サービスがおすすめです。

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