今から30年以上前、私はホンダの販売店で整備士をしておりました。
夏の暑い時期でしたが、関東各店の若い整備士達といっしょに、本田技研の某施設に泊りがけの研修に参加した時の話です。技研の講師は、創業者のエピソードや当時すごい性能を誇ったホンダF1エンジンの解説まで、幅広い知識とユーモアある話術で、私をこの講習にどんどん引き込んでいきました。そして、我々に対しても常に献身的に接して下さる情熱的な方でした。
今思い返せば、講習の内容の大半は、「ホンダは如何に世界一であるか?」という自慢話ばかりだったような気がします。しかし、私はこの自慢話を興奮しながら聞いていました。そして、自分が着ているツナギの背中にある「HONDA」のロゴを誇らしく感じたものです。ホンダスピリットに初めて触れ、心が震えた瞬間でした。
さて、私が敬愛する経営者である友人が、以前こんなことを言っていました。
「社員教育とは、錆びついた鉄の玉を磨き続けるようなものだ。元々、錆びついていた鉄の球でも集中して磨き続ければ、必ず光ってくる。しかし、手を抜いて磨く手を少しでも休めると、たちまち錆びついてくる。だから、社長の仕事は、錆びついた鉄の球を磨き続けることだ」・・と。
この話を聞いたときは、「なるほど、その通りだな」と、思いましたが、今では少し逆説的に捉えています。
それは、私自身が錆びついた鉄の球になってはいないか? この会社は、はたして社員が誇らしく思える値打ちや魅力がある会社なのか?自問自答の繰り返しです。
あの時の講師のように、会社の自慢話を心の底から堂々と語れる人間になりたい。そして、自分自身と社員の心が震えるスピリットを創造するぞ!と、心に刻み、今日も錆びついた自分の錆びをせっせと磨いています。
代表取締役 松戸 明