瑕疵保険(中古住宅用)の概要としくみ、住宅ローン控除について | 株式会社マツドリフォーム

瑕疵保険(中古住宅用)の概要としくみ、住宅ローン控除について

本稿では、中古住宅(既存住宅)瑕疵保険の概要やしくみについて解説します。瑕疵保険のメリットとデメリットについてもご紹介しますので、ご利用のご予定がある方は最後までご覧ください。

日本では新築がダントツ人気で、中古住宅は「見た目がキレイでも不具合が隠れているかもしれない」と購入をためらう方が多いです。「少し暮らしただけで不具合が出て、修繕に予想外の出費が発生するのではないか」と不安になる気持ちはよくわかります。

とは言え、中古住宅の中には価格や環境面で新築より優れているものが多く、年々人気が上昇しています。空き家問題のことを考えても、中古住宅を活用するのはたいへん望ましいことです。

そこで利用したいのが瑕疵保険です。この保険を活用することで、中古住宅への不安を減らすことができます。本稿で瑕疵保険の概要やしくみを知って、中古物件の購入にお役立てください。

中古住宅・中古マンションの瑕疵保険とは?

さっそく、瑕疵保険の概要からご説明します。まずは聞き慣れない「瑕疵 (かし)」という言葉の意味からご説明しましょう。

瑕疵(かし)保険とは?

 

瑕疵は法律用語で、通常あるべき品質を欠いている状態を表します。住宅関連の法規では「住宅品質確保法第2条第5項」で「瑕疵 (かし)とは、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態」と定義されています。

瑕疵保険の正式名称は「瑕疵担保責任保険」と言い、国土交通大臣が指定した瑕疵保険法人しか扱えません。この保険に加入しておくと、瑕疵が発生したときにその補修費用を補償してもらえます。

瑕疵保険が誕生した経緯を、簡単にご説明しておきましょう。その背景には2つの法規と、1つの事件がからんでいます。

 

西暦

できごと

概要

2000年

住宅品質確保促進法(品確法)施行

売主に10年間の瑕疵担保責任を強制

2005年

耐震強度構造計算書偽造事件

売主の倒産により補修費用が負担されず、買主が泣き寝入り

2007年

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(瑕疵担保履行法)制定

住宅供給業者に、保証金を供託するか、保険に加入することを義務づける

上述の流れで新築住宅の瑕疵保険が誕生したあと、中古住宅やリフォーム工事にも同様の保険が作られました。

なお、本稿では弊社が利用しているJIO社の中古住宅瑕疵保険をもとに解説していきます。

既存住宅(中古住宅)瑕疵保険とは?

それでは、中古住宅の瑕疵保険の概要と制度が作られた背景、加入方法について解説していきます。

概要

中古住宅(既存住宅)を対象とした瑕疵保険には、以下の特徴があります。

・新築と違い、任意加入制
・「建物や設備の検査+保証」のセットで提供
・住宅の構造や防水に瑕疵が見つかった場合、補修費用を対象に補償が受けられる
・特約で、給排水管や引渡前リフォーム箇所も保証を付帯できる
・被保険者が倒産していても、買主が直接保険金を受け取れる

この保険は、売主ではなく仲介事業者や検査事業者が被保険者となります。つまり、瑕疵が見つかったら「売主ではなく、保険に加入する事業者が補修や保険金の請求をしてくれる」ということです。

まんがいち被保険者が倒産してしまっても、保証が途切れることはありません。そのときは買主が直接保険金請求できますので、その保険金をもってリフォーム会社に補修してもらえばOKです。

詳しくは後述しますが、瑕疵保険に加入することで「住宅ローン控除」が使えるようになるのも見逃せないメリットです。10年間 (消費税引き上げにともない一定期間「13年間」に拡充)、住宅ローン残高の1%が所得税から控除されますので、家計の負担がかなり減るでしょう。

背景
さて、中古住宅の瑕疵保険は、どのような経緯で誕生したのでしょうか?何を目的としているのでしょうか?

中古住宅は品確法の対象になっておらず、また中古住宅の売主の多くが個人であることから、重い瑕疵担保責任を負わせるのは困難です。ですから、売買契約では瑕疵担保責任を免除するか、数カ月程度の短期間に限定するのが一般的です。

そうなると個人売主から中古住宅を購入した買主は、暮らし始めたあとに瑕疵をみつけた場合、ほぼ自費で補修を行うことになります。しかしこれでは、中古住宅の売買は活性化しません。

そこで政府が、安心して中古住宅の売買ができる体制を整えようと、中古住宅瑕疵保険やインスペクション(住宅診断)の普及促進を図っているのです。是非あなたも、安心な中古住宅を購入するためにも瑕疵保険を活用してみてはいかがでしょうか。

加入方法
中古住宅瑕疵保険の加入者は、売主でも買主でもありません。この保険を利用するときは、瑕疵保険会社に登録されている事業者に加入してもらいます。この「事業者」に該当するのは、以下の2業態です。

・不動産会社等の仲介事業者
・インスペクター(住宅診断士)等の検査事業者

「保険の加入、瑕疵の補修工事、保険金請求」は、すべて加入者(被保険者)が手配してくれます。瑕疵を発見した買主は、加入者にそれを伝えるだけでOKです。

加入者が倒産していても大丈夫です。そのときは、買主が「瑕疵の補修工事、保険金請求」をできるようになるので、免責金額を除いて、自己資金を使うことなく他のリフォーム会社や建築会社に瑕疵の補修を依頼できます。

中古住宅(既存住宅)瑕疵保険のしくみ

つづいて、中古住宅瑕疵保険のしくみについて詳しく解説していきます。実際に使うご予定がある方は、ご一読ください。

加入から保健金支払いまでの流れ

中古住宅瑕疵保険を利用するときは、まず瑕疵保険会社に事業者登録されている検査事業者か仲介事業者を探すことから始まります。

検査事業者に加入を依頼する場合は、以下の手順で進めていきます。

①売主または買主が検査事業者に検査と瑕疵保険の加入を依頼
②検査事業者が保険申込
③検査事業者が物件を検査
④保険会社が書類審査
⑤検査と書類審査に合格
⑥保険会社が検査事業者に保険証券発行
⑦検査事業者が買主に保証書交付
⑧瑕疵を発見した買主が検査事業者に補修を依頼
⑨検査事業者監理のもと瑕疵を補修
⑩検査事業者が保険会社に保険金を請求
⑪保険会社が検査事業者に保険金支払い

仲介事業者に加入を依頼する場合は、上述の手順のうち③の検査を保険会社がおこないます。

度々ご説明していますが、まんがいち被保険者(検査事業者や仲介事業者)が倒産した場合は、買主が保険会社に保険金を直接請求できるようになります。

保険期間と免責金額

中古住宅瑕疵保険は、売主と加入者の組み合わせによって、免責金額(自己負担額)と選択できる保険期間が変わります。表にまとめてみましょう。

売主

加入者

保険期間

免責金額

宅地建物取引事業者

宅地建物取引事業者

2年間、または5年間

10万円

個人

仲介事業者

1年間、2年間、または5年間

5万円

検査事業者

1年間、または5年間

5万円

※引渡前リフォーム工事特約は保険期間5年の場合のみ付帯可能
※引渡前リフォーム工事部分の保険期間は1年間

なお、保険期間のスタートは「引渡日」です。引渡日は、検査日から1年以内に設定する必要があります。

保険対象となる箇所

つづいて、保険対象となる箇所をご説明します。標準で保証されるのは「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」です。それぞれ、具体的にどのような箇所を指すのか、表でご紹介しましょう。

保険の対象箇所

具体例

構造耐力上主要な部分

木造

屋根版(やねいた)、小屋組、柱、壁、横架材、床版(しょうばん)、斜材、土台、基礎

鉄筋コンクリート

屋根版、壁、床版、基礎、基礎杭

雨水の浸入を防止する部分

木造

屋根、外壁、開口部

鉄筋コンクリート

屋根、配水管、外壁、開口部

上述の対象箇所に追加して、特約で「給排水管」と「引渡前リフォーム」を付帯させられます。ただし、先述のとおり「引渡前リフォーム」部分は保険期間5年の場合のみ付帯可能で、保険期間は選択できず「1年間」です。

中古住宅瑕疵保険の費用と費用負担者

中古住宅瑕疵保険の費用は、加入を依頼する相手が検査事業者なのか、それとも仲介事業者なのかによって検査料が変わります。仲介事業者に依頼する場合の検査は保険会社がおこなうので、保険会社が公表している価格表を参照できます。

いっぽう検査事業者に加入を依頼する場合の検査は、保険適用に必要な部分だけでなく、依頼者のご要望に合わせたホームインスペクション(住宅診断)が可能です。価格も相応に加算されますので、検査事業者から見積もりを取る必要があります。

なお、検査事業者によるホームインスペクション費用の目安は以下のとおりです。

・一般的な30坪くらいの一戸建ての場合 ⇒ 基本調査は「5~7万円」くらい
・一般的な70㎡くらいのマンション住戸 ⇒ 基本調査は「4~6万円」くらい

なお、ホームインスペクションについては補助金を出している自治体があります。詳しくは、以下の記事で解説していますので、ご興味ある方はご参照ください。

ホームインスペクション(住宅診断)費用の相場

仲介事業者に加入を依頼する場合の瑕疵保険の費用(保険料+検査料)は、保険期間や保険金額、床面積、建物種別などによって金額が変わります。目安は4~13万円くらいです。

料金表は以下の記事に載せていますので、詳しく知りたい方はあわせてご覧ください。

瑕疵保険の費用(保険料+検査料)と負担者

さて、この瑕疵保険の費用の負担者は売主でしょうか、買主でしょうか。じつは、負担者についてはとくに規定がありません。目安として「実施を依頼した者が負担する」のが慣習になっています。

とは言え、保険に加入するメリットは買主のほうが大きく、受益者負担の観点から買主負担になるケースが多いように感じます。売主と協議して、いくらか負担してもらう買主もおられます。

必要書類

つづいて、瑕疵保険の申し込みに必要な書類をご紹介します。以下をご準備ください。

・保険証券発行申請書
・契約内容の重要項目確認シート
・売買契約書の写し
・保証書の写し

上述のほとんどの種類は、被保険者となる事業者が準備してくれます。売主や買主が準備するのは、売買契約書の写しくらいでしょうか。

なお、必要書類は瑕疵保険会社によって異なりますので、必ず事業者登録している保険会社に確認を取ってください。

中古住宅(既存住宅)瑕疵保険のメリットとデメリット

最後に、中古住宅瑕疵保険のメリットとデメリットをご紹介して終わりたいと思います。まずは、デメリットからご紹介します。

中古住宅(既存住宅)瑕疵保険のデメリット

中古住宅瑕疵保険のデメリットは、主に以下の3つです。

・費用と手配、調査のための時間が必要
・住宅のすべてをカバーしてくれるというわけではない
・売主の同意・協力がないと加入に必要な検査ができない

まずなんといっても、費用と時間がかかることでしょう。検査によって何か指摘があった場合、指摘箇所を補修して再検査する手間暇も必要です。

瑕疵保険の検査は、原則的に目視・計測・非破壊でおこないます。つまり、言い換えると「目視・計測・非破壊で確認できないところは検査できない」のです。保険に加入したからといって、すべての不具合に対して保証が得られたわけではない点は注意が必要です。

また、買主が加入したくても、売主の同意・協力なしでは加入できないのもデメリットと言えるでしょう。売主からすると、瑕疵保険なしで買ってくれる買主を探し売ってもいいわけで、全ての売主が瑕疵保険の検査や補修に協力的とは限りません。

中古住宅(既存住宅)瑕疵保険のメリット

つづいて、中古住宅瑕疵保険のメリットをご紹介します。主なメリットは、以下の3つです。

・保険適用箇所の瑕疵について保証される
・一定の性能基準を満たしていることが担保される
・住宅ローン減税制度が利用できる

瑕疵保険のメリットは、まずなんといっても瑕疵が見つかった際に補修費用が保険でまかなえることでしょう。瑕疵を発見する度にいちいち売主ともめる必要がなく、被保険者が倒産していても買主は保険金を受け取れるので、中古住宅を買う大きな不安がひとつ解消できます。

さらに「専門的な知識と技術をもった第三者的な検査員が、住宅性能をチェックしてくれる」というのも、買主にとっては安心につながるでしょう。住宅診断の結果を、今後のリフォーム計画に活かすこともできます。

中古住宅瑕疵保険に加入すると住宅ローン減税も利用可能になり、年末の住宅ローン残高の1%相当額を所得税から控除できます。住宅ローン減税の利用要件をご紹介しておきましょう。

・自ら居住すること
・床面積が50m2以上であること
・中古住宅の場合、耐震性能を有していること

ポイントは「耐震性を有していること」で、住宅が現行の耐震基準(新耐震基準)に適合している必要があります。これをクリアする1つめの基準が「築年数が一定年数以下であること」です。具体的には、以下を満たす必要があります。

・耐火建築物以外(木造など) ⇒ 20年以内に建築された住宅であること
・耐火建築物(RC造、SRC造など)⇒ 25年以内に建築された住宅であること

上述の年数より古い住宅は、以下の3つのうちどれかを取得することで現行耐震基準に適合していると見なしてもらえます。

・耐震基準適合証明書
・既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)
・中古住宅(既存住宅)瑕疵保険に加入

なお住宅ローン減税は、借入期間や年収についても要件があります。詳しくは以下のサイトに載っていますので、ご利用予定の方は確認しておくといいでしょう。

参考:すまい給付金「住宅ローン減税制度利用の要件」

耐震基準については、以下の記事で詳しく解説しています。ご興味ある方は、あわせてご覧ください。

耐震基準とは?建築基準法の耐震基準の概要、新・旧の違い

【まとめ】瑕疵保険(中古住宅用)の概要としくみ

中古住宅瑕疵保険に加入しておくと、構造や防水、給排水管に瑕疵が見つかった場合、補修費用の補償が受けられます。瑕疵が見つかるたびに売主と買主がもめずに済むので、買主は安心して中古住宅を買えるでしょう。

瑕疵保険の加入者は売主でも買主でもなく、検査事業者や仲介事業者が被保険者となります。これらの事業者が倒産しても買主は保険金を受け取れるうえ、加入することによって住宅ローン減税の対象にもなるので、買主にとってメリットが多い保険です。

マツドリフォームの瑕疵保険の詳細はこちら

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