「リフォーム」とは、古くなった住宅や設備を新築なみに回復させる工事を指します。いっぽう「リノベーション」は、お施主様のライフスタイルに合うように間取りから作り替えます。ですから、リノベーション工事は規模が大きく、工事費も高額になりがちです。
そんなリノベーションですから、お施主様にしてみれば「絶対失敗したくない!」と思われるのが当然ですよね。「本当にリノベーションで良いのだろうか?」とか「新築のほうが良いのでは?」と悩まれる方もおられることでしょう。
そこで、本稿ではリノベーションのメリットとデメリットをご紹介したいと思います。「新築にしようか、リノベーションにしようか」と迷われている方は是非参考にしてください。
リノベーションのメリット
財務省の資料によると、首都圏の新築マンションの売買契約数は2005年頃から急激に下がっています。いっぽう、中古マンションの売買契約数はずっと緩やかに上昇していて、2016年以降は新築より中古の契約数が多くなっています。参考:中古マンション市場の動向について
このように中古マンションに注目が集まる中、中古物件を購入してすぐにリノベーションされるお施主様が増えています。いったい「中古物件購入+リノベーション」の魅力はどこにあるのでしょうか。 それをひも解くために、リノベーションのメリットを3つご紹介しましょう。
メリット1、設計やデザインの自由度が高い
リノベーションは、間取りや内装をイチから自由に作り直すことができます。これこそ、リノベーションの最たるメリットと言ってもよいでしょう。 もう一度住まいのデザインをイチから再設計できるということは、お施主様のライフスタイルに合わせて個性的な住まい作りができるということ。とくに「ラーメン構造」と呼ばれるマンションは枠組みだけ残しほぼすべての壁を撤去できるので、リノベーションの自由度が高いです。
それに比べて新築の建売住宅や分譲マンションは、一般ウケしやすい無難な間取りになっています。建てる会社が違っても、インテリア(内装)はどこも似たり寄ったりです。 注文住宅も、完全自由設計のハウスメーカーは少ないでしょう。ほとんどは企画商品の中から建材を選ぶセミオーダーで、お施主様の要望に合わせて自由に設計にするとかなり高額になります。
メリット2、物件の選択肢が増える
人気エリアの新築物件や土地は、なかなか買えません。とくに駅から近いエリアの新規分譲は、ほとんどありません。人気の学区の新築物件も入手が困難で、何ヶ月も待ってみたものの購入できず、諦める方がたくさんおられます。
ところが中古住宅を選択肢に入れると、だんぜん購入できる物件数が増えます。とくにマンションは、新築と比べて何倍も中古物件が出回っています。 ちなみに以下の資料によると、2018年度の首都圏の新築マンションの供給戸数は「37,132戸」でした。いっぽう、中古マンションの新規登録件数は「206,901戸」で、その差は5.57倍です。 参考:不動産市場動向データ集 年次レポート(2018年) リノベーションありきで中古住宅を買うなら、構造や外観に問題がなければOK。中身は刷新するので、気にしなくてよくなります。
中古が選択肢に入るなら、コンバージョンという手もあります。「コンバージョン」とは用途変更をともなうリノベーションのことで、たとえば倉庫や事務所を住居に作り替える工事を指します。倉庫や事務所まで選択肢に入るなら、そうとう自由に物件選びができます。
メリット3、新築よりも安く済む
新築物件の価値は築後25~30年くらいまで大きく下がり続け、以後はゆるやかに下降します。大幅な値下がりが止まった中古物件はお買い得で、リノベーション費用を加算しても新築より安く済みます。 新築に比べれば建物の寿命は短くなりますが、十分検討する価値がある価格です。
ちなみに新築物件の価値は、住み始めて最初の数年で急降下する傾向があります。この現象が起こる理由はいろいろありますが、よく言われるのが以下の3つです。
新築プレミアムが乗っている
売主・仲介・建築会社の経費や利益が乗っている
売主や建築(建設)会社の保証が二次取得者に引き継がれない
日本人は「新品好き」で、住まいも未使用状態に価値を感じます。この価値は「新築のときだけ得られる恩恵」ですから「新築プレミアム」と呼ばれます。 新築住宅には「新築プレミアム」だけでなく、販売活動費や売主・仲介会社・建築会社の利益が乗っています。ですので、1日でも誰かが住むと新築プレミアムや利益を含まない中古市場価格で購入できるのです。
リノベーションのデメリット
リノベーションにはデメリットもあります。良い面と悪い面、両方知っておくことが大切ですので、ご紹介しておきましょう。
デメリット1、新築より住宅ローンで不利
中古物件は、新築物件にくらべ住宅ローンでいくつか不利な点があります。代表的なものを3つご紹介しましょう。
「物件購入+リノベーション」が原則
住宅ローン減税が使えない物件もある
借入上限額が低く、借入期間が短くなる
リノベーションで住宅ローンを使うときは、中古物件の購入と同時に施工する必要があります。中古物件を購入したあと間を空けて施工する場合はリフォームローンを利用しますが、住宅ローンより金利が高くなります。
また、中古住宅が住宅ローン減税を利用するには耐震性能の要件を満たしている必要があります。その要件のひとつが築年数で、以下の年数以下であることが求められます。
耐火建築物(RC造やSRC造など)は築25年
耐火建築物以外(木造など)は築20年
参考:住宅ローン減税制度利用の要件
中古住宅は新築より担保評価額が低いので、借入上限額も低くなります。建物の寿命や耐久性を考慮した結果、最長借入期間も短くなることがあります。
デメリット2、古い耐震基準や建築関連法規をもとに建っている
中古物件を購入するときに気をつけたいのが、築年数です。築年数がわかれば、どのような耐震基準や建築関連法規をもとに建築されたのかわかります。
耐震基準については、1981年6月に大幅な見直しが行われました。ですので、この年月以前は「旧耐震基準」と呼ばれ、以降は「新耐震基準」と呼ばれています。 旧耐震基準の物件は、耐震性能を確認しておくほうが安心でしょう。新耐震基準に適合していることがわかれば、住宅ローン減税を利用することもできます。
なお、新旧の耐震基準を簡単に説明すると、以下のようになります。
旧耐震基準 ⇒ 震度5程度の中規模地震の揺れでも倒壊・崩壊しない
新耐震基準 ⇒ 震度6強~7程度の大規模地震の揺れでも倒壊・崩壊しない
古い物件の中には、現行の建築関連法規を満たしていないものもあります。たとえば現行の法規では建てられない大きな家(建ぺい率・容積率オーバー)や、規定幅の道路に隣接していない土地に建つ家(接道義務違反)が該当します。 こういった物件は、住宅ローン審査が通りづらかったり、売却しづらかったりします。安く買える反面、大きなデメリットがあることも覚えておきたいところです。
デメリット3、想定外の費用が発生することも
リノベーションでは、既存の内装を解体してみて初めてわかることがあります。たとえば、壁や床をめくってみると構造がシロアリに喰われていたり、配水管から水漏れしていたり。断熱材が入っていなかったり、柱が割れていたりといった不具合が見つかることもあります。 そういった隠れた不具合を正常な状態に戻すには、当初想定していなかった費用がかかります。まれですが、アスベスト建材がみつかり除去に高額の費用がかかるケースもあります。
デメリット4、お引っ越しまで時間がかかる
リノベーションは、物件購入から工事を経てお引っ越しまで3ヶ月以上かかる場合もあります。こういったケースでは、現在お住まいの住居の家賃と住宅ローンを、しばらく同時に支払うことになります。 住まい作りや住宅ローンの手順も煩雑になりがちなので「ラクに進めたい、早く引っ越したい」という方は建売住宅や建築済みの分譲マンションのほうがいいかもしれません。リノベーションの流れについては以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
》中古マンションや中古住宅を買ってリノベーションするときの流れ
いくつかデメリットをご紹介しましたが、欠点に潜む不利益を軽減するには、リノベーションをよく知るリフォーム会社と二人三脚で物件を探す必要があります。不動産会社のみの意見を参考に購入すると思わぬ落とし穴にはまることもあるので、お気をつけください。
「中古住宅購入+リノベーション」は一戸建てがいい?マンションがいい?
さて、中古住宅を買ってリノベーションするなら一戸建てがいいのでしょうか?それとも、マンションがいいのでしょうか?
最後に「一戸建てリノベーション」と「マンションリノベーション」のメリットとデメリットをご紹介して終わりたいと思います。一戸建てかマンションかで迷っておられる方は、参考にしてください。
「中古一戸建て+リノベーション」のメリットとデメリット
中古の一戸建ては、外観も内装も自分好みにリノベーションできます。法規上の条件をクリアできれば、増築や減築も可能です。一戸建ては、建物が老朽化しても土地の資産価値が残ります。土地の所有者も自分ひとりか身内どうしであることが多く、比較的自由に売却できます。
いっぽう、一戸建てのリノベーションは高額になりやすいというデメリットがあります。階段位置や取れない柱などの制約があるのも、欠点といえるでしょう。人気エリアの物件がなかなか買えないことも、注意が必要です。
「中古マンション+リノベーション」のメリットとデメリット
中古マンションは、中古一戸建てに比べて安価に買えます。人気エリアの物件も、比較的買いやすいでしょう。構造の耐用年数が長いのも、魅力のひとつです。いっぽう、リノベーションする際にマンションの管理規約に従わないといけないのは、デメリットと言えるでしょう。
たとえば、床材の防音性能規定やオール電化不可の規制を設けているマンションをときどき見かけます。 さらに、外観や玄関ドア、窓など共有・専有部分は手を加えられません。PS(共有の配水管スペース)も移動できないので、キッチン・風呂・トイレなど水回りの位置にも制約がかかります。
一戸建てとマンションの特徴
リノベーションとは直接関係ありませんが、一戸建てやマンションの特徴もご紹介しておきましょう。 以下の一戸建ての特徴は、ぜひ覚えておいてください。
駐車場付き物件が多く、庭付き物件もある
修繕のための積み立ては自分でやる
室内の温度環境が断熱性能に左右されやすい
いっぽう、覚えておいていただきたいマンションの特徴は以下のとおりです。
高層階は眺望や風通しがよい
上下階との騒音トラブルが多い
管理組合費や修繕積み立て、駐車場代が別途かかる
最初から「一戸建てじゃなきゃダメ」とか「絶対にマンションにする」と決めてしまう必要はありません。どちらの物件も見たあとで、自分に合うほうを選べばOKです。
中古住宅を買ってリノベーションするメリットとデメリットまとめ
「中古住宅購入+リノベーション」は、引き渡しまでお時間がかかります。耐震性能や住宅ローンでは、新築より不利な面もあります。ですが、新築より安く、自分のライフスタイルに合った個性的な住まいが作れます。購入物件の選択肢も増えるので、希望のエリアに住むこともできるでしょう。
中古住宅の購入は早い者勝ちです。ライバルより早く買うためには、その物件で希望のリノベーションがかなえられるのか迅速に判断しなければなりません。ですから「中古住宅購入+リノベーション」をお考えの方は、不動産会社とリフォーム会社をうまく連携させる必要がありますが、これが難しい……。
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