中古物件を買ってすぐにリノベーションすると、どれくらいの予算が要るのでしょうか?500万円、あるいは1,000万円でどこまでできるのかご存じですか?
リノベーション工事の料金は諸条件によって大きく上下するので、一概に「相場はこれくらい」と言いづらいものがあります。ですが、リノベーションをご検討中の方にしてみたら、予算がわからないと前に進めないですよね。
そこで本稿ではリノベーション費用の内訳と相場について、参考情報をお伝えしたいと思います。リノベーション費用の総額を下げる方法もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
リノベーション費用の内訳
中古物件を買ってすぐにリノベーションするときに必要な費用は、物件代金と工事代金だけではありません。不動産売買や工事、お引っ越しなどにともなう諸費用も必要です。
まずは、どのような費用項目があるのかご紹介しておきましょう。
物件購入の関連費用
まずは、物件購入の関連費用からご紹介します。物件代金もふくめ、以下の費用がかかります。
項目 | 備考 |
物件購入費 | 物件代金、不動産売買契約書に貼る印紙代 |
固定資産税・都市計画税清算金 | 一年分を売主が支払い済みなので、日割り計算する |
仲介手数料 | 売買価格の「3%+6万円(税別)」 |
登記費用 | 所有権移転登記、抵当権設定登記 |
住宅ローン費用 | 事務手数料、保証料、住宅ローン契約書に貼る印紙代 |
上述の費用は、購入する物件の価格や住宅ローンの借入額によって変わります。物件の購入の関連費用全体で、物件価格の8~10%くらいの金額はみておきたいところです。
リノベーション工事の関連費用
リノベーションの工事費は、以下の項目の合計で決まります。
- 工事原価(材料費、職人の人件費)
- 現場管理費
- 諸経費(一般管理費)
建築工事の価格は、お店で商品を買うときの価格とはかなり感じが違います。その一番の要因は、人件費や管理費を分けて考える必要があることです。
たとえば果物屋でリンゴを1個買って100円支払うとき、それはリンゴそのものの代金のように感じます。でも実際には、100円の中に果物屋の人件費や経費も含まれています。
いっぽう、廊下にダウンライトを1つ取り付けたいときはどうでしょう。メーカーカタログに載っている定価はダウンライト本体の価格のみです。そこに電気工事職人の人件費やリフォーム会社の経費などを加算しなければなりません。
ここは、お施主様(工事発注者)と施工会社で認識の違いが生まれやすいところです。お施主様にも知っておいていただきたいですが、我々もしっかりお伝えすべきところです。
話が少しそれましたが、リノベーション工事は複数の工種の職人が係わるので、合計するとけっこうな人件費がかかります。参考までに、どんな工種があるのかご紹介しましょう。
工種 | 職務の概要 |
解体工事 | 不要な内装や壁を撤去して、産業廃棄物として処分する |
仮設工事 | 工事期間中一時的に設ける足場や仮設水道、仮設トイレの設置 |
大工工事 | 主に木工事、大工の棟梁は職人の長のような存在 |
電気工事 | 電気配線やコンセント・スイッチ・照明器具の取り付け |
内装工事 | 主にクロス(壁紙)貼り |
板金工事 | 金属薄板の加工や取り付けなど |
設備工事 | キッチン・風呂・トイレなど住宅設備の設置、上下水道の配管など |
ガス工事 | 給湯器やガス配管の設置、ガス器具との接続など |
家具工事 | 造作家具を作る |
左官工事 | 壁などの仕上げにモルタルや塗り壁を使う |
タイル工事 | 壁などの仕上げにタイルを使う |
塗装工事 | 木部などを塗装する |
外壁工事 | 一戸建ての外壁を塗装し直す、または貼り替える |
屋根工事 | 一戸建ての屋根を塗装し直す、または葺き替える |
上述の建物工事以外に、カーテンやエアコンの取り付けも必要になるでしょう。一戸建ての場合は、外構工事が要るケースもあります。
その他諸費用
リノベーション工事にともなう諸費用もご紹介しておきましょう。
項目 | 備考 |
あいさつ回りの粗品 | 着工前や引っ越し後のあいさつ回り用 |
仮住まいの家賃 | 住宅ローンの返済と重なる場合は注意 |
保険 | 火災・家財保険、地震保険 |
住民票・印鑑証明・所得証明 | 不動産売買契約や住宅ローン契約で必要 |
引っ越し代 | 3月下旬~4月上旬は割増料金 |
照明器具 | 一軒まるごとなら20~40万円くらいかかる |
新規家具・家電購入費 | 新規購入するものはリストアップしておく |
諸費用の金額も、人によってかなり差があります。たとえば火災保険なら、鉄筋コンクリートのマンションなのか木造の一戸建てなのかで倍近く変わるでしょう (木造のほうが高い)。
新規に家具や家電を買い足さない方もいれば、50万円以上使う方もいます。引っ越し間際になって予算不足で慌てなくて済むように、あらかじめ予算を組んでおくことをおすすめします。
リノベーション費用の相場
つづいて、リノベーション費用の相場をご紹介します。
リノベーション費用は、物件の状況や工事規模などいろいろなことが影響して大きく変動します。以下でご紹介する相場は、あくまで参考とお考えください。
一戸建てとマンションのフルリノベーション相場
建物の構造だけ残して間取りから作り替える規模の改修工事を「フルリノベーション」とか「スケルトンリフォーム」と呼びます。
この規模の工事の相場は、おおよそ以下のとおりです。
- 一戸建て ⇒ 坪単価50~80万円程度
- マンション ⇒ 坪単価40~70万円程度
一戸建てのほうがやや高くなるのは、外壁や屋根の改修が必要だからです。
なお、坪単価は「リノベーション工事価格÷物件の床面積(坪)」で算出します。「㎡」を坪に換算するときは「㎡×0.3025」で計算できます。「100㎡」なら「30.25坪」ですね。
予算別のリノベーション例
参考まで、価格帯ごとにどれくらいのリノベーションができるのかご紹介しましょう。
500万円未満
500万円未満の工事は、リノベーションというよりは部分リフォームの規模です。たとえばLDKだけのリフォームで、内装を刷新。台所とダイニングの間仕切り壁を撤去して、キッチンも交換するような工事ができます。
500~1,000万円
この価格帯になると、内装や水回りの住宅設備を一新できます。1,000万円あると、かなりいろんなことができるでしょう。一戸建てなら内装や設備を一新するだけでなく、外壁や屋根の塗り替えも可能です。マンションなら、スケルトン(構造以外すべて解体撤去)からフルリノベーションも視野に入ります。
1,000~1,500万円
1000万円を超えると、マンションならよほど広い住戸でなければ十分な予算です。スケルトンからフルリノベーションはもちろん、一部に自然素材を使ったりデザインにこだわったりできるでしょう。1,500万円あると、一戸建ても30坪くらいの家ならフルリノベーションできます。ちょっとした間取り変更や、既存サッシを断熱サッシに交換することも可能です。
1500万円以上
2,000万円くらいあると、一戸建てなら建て替えなみのリノベーションができます。間取りの変更だけでなく、耐震補強や断熱工事などひととおり刷新できるでしょう。100㎡くらいある大型マンションのフルリノベーションも可能です。
リノベーション費用に影響を与えるもの
少し前に、リノベーション工事はいろいろなことが影響して価格が変動するとご説明しました。
では、いったいどんなことが影響して価格が変わるのでしょうか。工事価格が上がりやすい条件をいくつかご紹介しましょう。
会社要因 | ・施工会社の仕入原価が高い |
環境要因 | ・施工面積が大きい |
グレード要因 | ・住宅設備のグレードが高い |
もしあなたがリノベーション費用を節約したいなら、上述の表の項目に気をつけていただくとよいでしょう。
リノベーション費用をおさえる方法
最後に、リノベーション費用をおさえる具体的な方法についてご説明します。リノベーション費用を直接的に下げる方法2つと、間接的に補う方法を2つご紹介します。
住宅設備のグレードを下げる
新築住宅であれば面積を狭くするのが一番効果的な予算削減方法ですが、リノベーションはそうはいきません。
そこで注目したいのが、住宅設備。住宅設備は高額商品ですので、グレードを落とすことでリノベーションの予算を下げられます。
代表的な住宅設備は、以下の4つです。不必要な高級オプションを付けないように、意識するとよいでしょう。
- キッチン
- 風呂
- 洗面化粧台
- トイレ
住宅設備は、予算配分にメリハリを付けることが大切です。
「お風呂が好きなので、こだわる。だけど、あまり料理しないのでキッチンは最低限」とか「料理が好きなので、コンロはこだわる。でも、キッチン引き出しの面材は一番安いものでいい」とか。
うまくメリハリをつけた選定ができると、気に入った住宅設備と予算節約の両立が図れ、満足度がアップするでしょう。
できるだけ新建材の既製品を使う
工場で大量に作られる新建材は、安く手に入ります。デザインがよいものを、うまく取り入れるとよいでしょう。
新建材とは、無垢材や石材などの自然素材の代替人工材料のことです。風合いが天然素材に劣るものの、安価で、種類やカラーバリエーションが豊富です。
代表的な新建材をあげてみましょう。
- 珪藻土調の壁紙
- 無垢材風のフローリング(床材)
- タイル調のサイディング(外壁材)
- 集成材で作った既製品の木製ドア
- 人造大理石のキッチン天板
天然素材は高級感がありますが、材料費や施工の手間賃が高くなります。新建材をうまく活用してみてください。
補助金や税控除を使う
さて、リノベーション費用を直接的に下げる方法を2つご紹介しましたが、予算を下げるだけでは夢がありません。予算を下げずに補う方法もご紹介します。その代表が、補助金です。自治体によっては、以下のリノベーションに対して助成をおこなっています。
- 耐震リフォーム
- 省エネ(断熱)リフォーム
- バリアフリー化
あまりないですが、リフォーム全般に使える補助金を準備している自治体もあります。補助金は予算がなくなりしだい終了するので、タイミングが合えば活用を検討してみましょう。
お住まいの自治体が補預金制度を設けているかどうかは、以下のWebサイトで確認できます。
参考:地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
もうひとつ。税控除も使うとよいでしょう。
中古物件を購入して即リノベーションするなら、住宅ローンが使えます。住宅ローンが使えるなら、条件を満たせば所得税控除(住宅ローン控除)が使えます。
金利が低い住宅ローンを借りる
意外と見落としがちですが、金利が低い住宅ローンを選ぶのも有効です。リノベーション計画の質を落とさずに予算を削減できる「奥の手」と言ってもいいでしょう。
たとえば「4,000万円(物件代+リノベーション代)、30年ローン」で金利1.0%と0.9%でどれくらい返済総額が変わるか試算してみましょう。
- 金利1.0% ⇒ 46,316,090円
- 金利0.9% ⇒ 45,657,612円
なんと、差額は658,478円。0.1%金利を引き下げてもらうだけで、約66万円の利息節約効果があるのです。銀行と交渉する価値があると思いませんか?
まず複数の銀行で仮審査してもらい、金利を比べてみてはいかがでしょうか。その中で金利が低い銀行に「もう0.1%下がりませんか?」と交渉してみてはいかがでしょうか。
リノベーション費用の内訳と相場まとめ
リノベーション工事の費用はいろいろなことが影響して上下するので、一概に「相場はいくら」とはいいづらいものがあります。
あくまで参考程度の目安ですが、ご予算は1,000万円を超えるとかなり大規模なリノベーションができます。マンションなら、スケルトンからフルリノベーションできるでしょう。
リノベーション費用を節約したいときは、まず補助金が使えないか調べてみましょう。次に住宅ローン控除の利用や、金利引き下げ交渉を検討してみましょう。設備や建材のグレードを落とすのは、そのあとです。
うまくリノベーション費用を抑えつつ、満足いく住まいづくりを実現してください。
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